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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1138号 判決 1948年12月21日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人大山菊治の上告趣意は末尾添附別紙記載の通りでありこれに對する當裁判所の判決は次ぎの如くである。

論旨第一點について、

記録を調べると原審における昭和二三年三月三〇日の第二回公判調書(判決言渡調書)に前野重成が公判に立會った旨の記録はあるが「檢事」との記載がないことは所論の通りである、しかし記録第五三丁の訴訟記録送付書には札幌高等檢察廳檢事前野重成との署名がありこれによっても右前野重成が右檢察廳の檢事であることがわかる、のみならず同人が右檢事であることは原審(札幌高等裁判所)には固より顕著な事実であるから同裁判所の公判調書に前野重成が立會った旨の記録があれば、それで公判調書に檢事が立會ったことを記載したものといえる、只同調書に「檢事」の二字が脱落して居る欠陥があることは確だが刑事訴訟法第六〇條が公判調書に檢事の官氏名を記載することを要求して居るのは結局檢事列席の上公判裁判所が適法に成立したことを調書によって明瞭ならしめんとする趣旨以外のものではないから、前記の如く記録により判決言渡調書に檢事が立會った事実記載のあることがわかる以上該調書に「檢事」の二字が記載してないからといってその爲判決言渡其のものが無かったものだとか或は違法無効のものだとかいうべきものでもない、判決の破毀の理由ともならない。(その他の判決理由は省略する)

以上の理由により上告を理由なしとし刑事訴訟法第四四六條に從い主文の如く判決する。

以上は當小法廷裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)

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